前回に引き続き、M&A情報の総括として経済産業省中小企業庁が発信している、中小M&Aガイドライン(2020年3月31日に中小企業におけるM&Aが円滑に促進するよう策定されました。)をご紹介します。M&A全般の知識と理解を包括的に深めていただくため2021年11月までに5~6回に渡り抜粋した内容をM&Aコラムで掲載致します。 今回の掲載分(第5回)は、中小M&Aガイドライン「第三者への円滑な事業引継ぎに向けて」の「第1章 V 仲介者・FA の手数料についての考え方の整理」から「第2章 II  M&A 専門業者」までを見出しと抜粋した内容でご案内します。 経済産業省中小企業庁 中小M&Aガイドラインについては「経済産業省中小企業庁 中小M&Aガイドライン」を参照し、ご確認及びご参考にしてください。

V 仲介者・FA の手数料についての考え方の整理
1 手数料の種類
(1) 着手金 着手金は、主に依頼者との仲介契約・FA 契約締結時に発生する手数料である。
(2) 月額報酬 月額報酬(定額顧問料、リテーナーフィーと呼ばれることもある。)は、主に月ごとに定期的に定額で発生する手数料である。
(3) 中間金 中間金は、基本合意締結時等、案件完了前の一定の時点に発生する手数料である。
(4) 成功報酬 成功報酬は、主にクロージング時等の案件完了時に発生する手数料である。
① 譲渡額(譲受額)
② 移動総資産額
③ 純資産額
➡上記の基準にして算出する。
2 レーマン方式 レーマン方式は、「基準となる価額」に応じて変動する各階層の「乗じる割合」を、各階層の「基準となる価額」に該当する各部分にそれぞれ乗じた金額を合算して、報酬を算定する手法であり、特に M&A 専門業者において広く用いられている。 例えば、下記のような表を用いて報酬を算定するが、例示された各階層における価額・割合は必ずしも下記の価額・割合に限定されるものではなく、各仲介者・FA により異なる。そもそも、レーマン方式を採用せず、「基準となる価額」によらず一律の割合を乗じるケースや、定額とするケースもある。
3 具体例
仮に、M&A 専門業者が中小 M&A のマッチング支援等を行った場合に、譲り渡し側又は(譲り渡し側経営者であることが多い)譲り渡し側株主が支払うことになる手数料について、具体的な事例を示す。なお、消費税及び地方消費税は合計10%と仮定する。

● 事例1 事業引継ぎ支援センターの登録機関等である M&A 専門業者に依頼したところ、6か月間の業務遂行により、譲渡額1億円の株式譲渡が成立したケース
・着手金100万円(税抜)【成功報酬は別途】
・月額報酬:なし
・中間金:なし
・成功報酬:前述のレーマン方式(基準:譲渡額、最低手数料:500万円(税抜))
※事業引継ぎ支援センターへの相談は無料であるが、登録機関等に依頼する場合は有料である。
● 手数料 ・着手金:100万円×110%=110万円(税込)・・・(a)
・月額報酬:0円
・中間金:0円
・成功報酬:1億円×5%×110%=550万円(税込)・・・(b)
⇒手数料総額:660万円(税込)・・・(a)+(b)
※譲渡額から手数料総額を控除した金額は9340万円となる。

● 事例2 金融機関から紹介された M&A 専門業者に依頼したところ、1年間の業務遂行により、譲渡額5億円の株式譲渡が成立したケース(なお、負債額は5億円)
・着手金:なし
・月額報酬:なし
・中間金:50万円(税抜)【成功報酬に含まれる】
・成功報酬:前述のレーマン方式(基準:移動総資産額、移動総資産額:10億円、最低手数料:1000万円(税抜))
● 手数料
・着手金:0円
・月額報酬:0円
・中間金:50万円×110%=55万円(税込)・・・(c)
・成功報酬:(5億円以下)5億円×5%×110%=2750万円(税込) (5億円超10億円以下)5億円×4%×110%=2200万円(税込) →2750万円(税込)+2200万円(税込)-55万円(税込) =4895万円(税込)・・・(d) ⇒手数料総額:4950万円(税込)・・・(c)+(d) ※譲渡額から手数料総額を控除した金額は4億5050万円となる。

● 事例3 顧問税理士から紹介された M&A 専門業者に依頼したところ、4か月間の業務遂行により、譲渡額3000万円の事業譲渡が成立したケース
・着手金:50万円(税抜)【成功報酬は別途】
・月額報酬:10万円(税抜)【成功報酬は別途】
・中間金:なし
・成功報酬:一律4%(基準:譲渡額、最低手数料:300万円(税抜))
● 手数料
・着手金:50万円×110%=55万円(税込)・・・(e)
・月額報酬:10万円×4×110%=44万円(税込)・・・(f)
・中間金:0円
・成功報酬:300万円×110%=330万円(税込)・・・(g) >3000万円×4%×110%=132万円(税込) ⇒手数料総額:429万円(税込)・・・(e)+(f)+(g) ※譲渡額から手数料総額を控除した金額は2571万円となる。

4 業務内容と手数料の関係 仲介者・FA の手数料には一律の基準がなく、原則として各仲介者・FA の判断に委ねられていることから、仮に同じ M&A が実現したとしても、仲介者・FA が異なれば、発生する手数料の金額は多様である。 重要なのは、あくまで、仲介者・FA の業務内容と手数料の金額が客観的に見合っているか否か、そして依頼者である中小企業やその経営者が納得できるか否か、という点である。 仲介者・FA と契約を締結する前に、まずは、業務内容が具体的に何であるのか、手数料の算定方法と発生時期はどのようになっているか、という点について入念に確認することが重要である。

VI 問い合わせ窓口
第2章 支援機関向けの基本事項
I 支援機関としての基本姿勢
1 依頼者(顧客)の利益の最大化
2 それぞれの役割に応じた適切な支援
3 支援機関間の連携 II M&A 専門業者

1 M&A 専門業者による中小 M&A 支援の特色 M&A 専門業者は、M&A の仲介業務や FA 業務に従事する専門業者であり、中小 M&A の実現にとって重要な役割を有する支援機関である。 M&A 専門業者がマッチング・交渉等についての支援を行うことで、これまでに数多くの中小 M&A が成立したと言え、M&A 専門業者は、近年の中小 M&A 市場の成長に相当程度の貢献を果たしてきた。 一方で、士業等専門家については法令において資格要件、業務内容、善管注意義務や刑罰等が明確にされている(各専門家団体における懲戒処分等による制裁も存在する。)ものの、M&A 専門業者については、許可制・免許制等は採用されておらず、業界全体における一般的な法規制も存在していない(例えば、不動産取引においては、宅地建物取引業法の規制が存在するが、M&A 専門業者についてこのような法規制は存在していない。)。 また、中小 M&A を支援する際には、マッチング能力や交渉に係る調整ノウハウ、更に、財務・税務・法務といった分野の専門知識が不可欠となるケースが多くあるが、支援経験や知見の乏しい M&A 専門業者等の場合には、適切に業務を進められないおそれがあると言える。
2 行動指針策定の必要性 中小 M&A 市場の拡大及びこれを支える M&A 専門業者の増加に鑑みると、各 M&A専門業者の業務方針に委ねるだけでなく、中小 M&A 市場の透明性・公正性を確保するため、一定の指針が示される必要がある。
3 各工程の具体的な行動指針
(1) 意思決定 (弊社参考資料:M&Aコラム第1回
       (弊社参考資料:M&Aコラム第4回
       (弊社参考資料:M&Aコラム第5回
(2) 仲介契約・FA 契約の締結
(3) バリュエーション(企業価値評価・事業価値評価)
(4) 譲り受け側の選定(マッチング)
(5) 交渉
(6) 基本合意の締結
(7) デュー・ディリジェンス(DD)
(8) 最終契約の締結
(9) クロージング
(10) クロージング後(ポスト M&A)

4 仲介者における利益相反のリスクと現実的な対応策 ※弊社もM&A仲介対応しています。
5 専任条項の留意点
6 テール条項の留意点

以上、M&Aコラム第23回 【ご案内】中小M&Aガイドライン第5回でした。
弊社のM&Aコラムやホームページも合わせて参考にしてください。
次回も引き続きガイドライン内容の続きに触れていく予定です(次回、M&Aコラム第24回 【ご案内】中小M&Aガイドライン第6回 2021年11月更新予定)。

 


リンク:経済産業省中小企業庁 中小M&Aガイドライン