(株)IPO・M&Aコンサルタントグループでは以前、ビジネス誌を発行している(株)ビッグライフ社発行のビッグライフ21・2016年5月号よりM&Aコラム・M&A実務基礎編、応用編を執筆し毎月連載しておりました。掲載から4年近く経過し、基礎編を再掲載してほしいとのご要望がありましたので、2020年3月より再掲載致します。  

M&A実務基礎編としてまずはM&Aの基本的会社の売却や買収、事業承継を検討されている中堅・中小企業経営者の方々に、M&Aに関する正しい知識と知見を持っていただくと同時に、M&Aおよび事業承継の実状を知って頂き、厳しいビジネスの荒波を乗り越え成功という果実をつかみ取るお手伝いの一助にとの想いをこめ再掲載致します。
中堅・中小企業のM&Aは敷居が高く、大部分の経営者はM&A実務を体験するなど皆無でM&Aの正しい知識、知見を獲得することが困難といえます。近年、国内大企業や外資系企業が仕掛けるM&Aが、テレビや新聞などのメディアで取り上げられることが多くなりこれはある意味、M&Aという経済行為が世間に浸透してきた証拠といえると思います。
しかし、一方でM&Aという言葉がメディアの力によって一人歩きを始め、大きく誤解されているのも事実です。
特に中小企業のM&Aは経営極秘情報であるため水面下で取引されるという性格上なかなかその実態は世間でははかりかねる部分が多いのも事実です。大手のM&A仲介会社やM&Aコンサルタント会社などは、どうしても仲介手数料が高く収益性の高い大企業案件や大型案件に集中し、中小企業のM&A案件が限られた狭いマーケットでのマッチングに偏ってしまうという構造的な問題もあります。
ほとんどの中堅・中小企業経営者の方々は、M&Aを自社とは関係のない遠い世界の出来事と考えてしまう傾向もあるようです。ただ、高齢化社会を迎え、企業の後継者問題が増加するなかで、中堅・中小企業においてもM&Aのニーズは増加して、深刻な経営問題に浮上する時代となっています。
当社では長年M&A実務に携わり、豊富に中堅・中小企業のM&A事例体験、現場での経験知をもとにM&Aの知識や知見を是非共有させて頂き、経営者の皆様のお役にたてれば幸いです。

まずはM&Aの基本的な流れを 11のステップに従ってご説明します。
ステップ➀:事業もしくは会社の譲渡・売却の検討
M&Aを決断する日本の経営者は、最近では会社成長の出口としてM&A戦略を駆使した経営者も出現してきましたがまだ少数派であり、その多くは後継者への事業承継、資金調達やマーケットの激変等に色々と悩んだ結果、自社に最も適した経営戦略の選択肢としてM&Aに踏み切るのが大多数といえます。
もちろん、経営者自身が手塩にかけて育ててきた会社や従業員を手放すわけですから、生半可な気持ちではM&Aに踏み切れません。経営者一人で結論が出ない場合は、信頼できる人に相談することになりますが、会社の売却というデリケートな話をするわけですから、相談相手の選択は重要です。
ステップ➁:M&Aアドバイザー(仲介業者・助言者)の選定
M&Aを決断したら、M&Aアドバイザーを選定します。M&Aアドバイザーとは、売り 手(または買い手、もしくは双方)と契約し、顧客にとって有利な交渉を進めるためのアドバイスを行う専門家のことです。M&Aアドバイザーとは、機密保持契約やM&Aアドバイザリー契約を締結したうえで、今後の方針を打ち合わせます。 M&Aアドバイザーは、プロとして M&A仲介業務を行っていますので、契約した場合に一般的には業界標準のレーマン方式という報酬モデルをもとにM&A仲介手数料が発生します。(レーマン方式に関しては本コラム連載の中で改めて後述します)。成功報酬形式が多いですがM&A仲介会社によっては着手金を請求するところもあります。M&Aの成否は、M&Aアドバイザーをはじめとするアドバイザーの腕次第といっても過言ではありません。
ステップ➂:M&A戦略構築とターゲット候補先の選定
会社にとって将来の最善シナリオをM&A戦略によって構築します。会社の条件に最適な相手先企業を情報収集してリストアップのうえ、交渉ターゲット候補を選定します。 M&Aアドバイザーを通じて、候補企業にコンタクトし、ノーネームシートという匿名で自社の概要でアプローチを開始します。
関心を示した場合は、秘密保持契約(NDA)を締結のうえで必要な資料を開示し、交渉を開始します。
売却先企業は、買収先の経営戦略や事業シナジー効果の見極め、経営者の人物像など様々な要素を考慮して自社に有利な選定を進めます。
ステップ➃:売却金額の見積り(企業価値の算定)
上場している企業であれば、市場の株価をもとに売却価額のメドがたちますが、非上場会社では、非上場企業に適した企業価値算定方法を駆使し、決算書や事業計画書、試算表、資産内容、借入の多寡、取引先や従業員など、その他知的資産や無形資産なども含め総合的に企業価値を算定することになります。
企業価値の算定方法には、DCF法、時価純資産価額方式、類似会社比較法など、いくつかの計算方法があります。企業価値は、計算方法や収支計画の数値によって大きく左右されます。売却金額、企業価値算定はM&A交渉の中では最重要なポイントのひとつなので本コラム連載の中で改めて詳しく述べさせて頂きます。

今回はステップ➃まで。次回コラムでステップ➄からお話させて頂きます。
以上基礎編第一回です。M&Aの基本的な流れを11 のステップに従ってご説明し、今回ステップは➀~ステップ➃まででした。