(株)IPO・M&Aコンサルタントグループでは以前、ビジネス誌を発行している(株)ビッグライフ社発行のビッグライフ21・2016年5月号よりM&Aコラム・M&A実務基礎編、応用編を執筆し毎月連載しておりました。掲載から4年近く経過し、基礎編を再掲載してほしいとのご要望がありましたので、2020年3月より再掲載致しております。

【再掲】M&Aコラム ビッグライフ第二回  (株)IPO・M&Aコンサルタントグループ
前回のM&AコラムではM&Aの基本的な流れを、11のステップに従ってご説明するということで、まず前半のステップ①から➃までを解説させてもらいました。
ステップ①:事業もしくは会社の譲渡・売却の検討
ステップ②:M&A アドバイザー(仲介業者・助言者)の選定
ステップ③:M&A戦略の構築とターゲット候補先の選定
ステップ④:売却金額の見積り(企業価値の算定)

今回のM&Aコラムでは後半の➄から⑩までを解説させて頂きます。
ステップ⑤:M&A本格交渉開始。第一関門、基本合意書の締結へ。
買い手候補が決まりいよいよM&A本格交渉が始まります。交渉では、M&Aアドバイザーを通して売り手と買い手が何度も条件のすり合わせを行います。買収価格、M&A の形態、方法のほかに、スケジュール、買収監査の進め方、買収後の経営方針や経営陣、従業員の取り扱いなど広い範囲にわたって協議し、基本的な合意をめざします。複数の買い手と交渉する場合、入札方式等の採用など、いくつかの方法論がありますが交渉に関する詳細は第二部で解説します。買い手の意向を確認するため買収意向表明書、LOI(レター・オブ・インテント)の提出を求める場合もあります。買い手の買収意志確認書LOI、は法的拘束力がない場合が多いのが特徴。そしてM&Aの成功に向けた第一関門が、基本合意書の締結です。交渉を重ねて基本事項で双方が納得して基本合意するために、気を抜くことができない重要なプロセスといえます。
ステップ⑥:基本合意書の締結
M&Aの売買金額面である程度合意できる見込みが立つと、買い手と売り手の両当事者間で基本合意書の締結に向けた交渉段階に進みます。基本合意書とは、最終的な株式譲渡契約書のベースとなるもので、 M&Aの基本的な合意事項について取り交わされる書類です。基本合意書の内容は、株式譲渡価格、株式譲渡後の役職員の処遇など、具体的な条件が詳しく記載されたものが一般的ですが、案件によっては基本的な合意内容のみが記載された簡易版での合意書の場合もあります。売り手候補を複数交渉していた場合には通常、優先交渉権を付与され交渉先を絞り込むことを基本合意に盛り込みます。その他、無償解約事項などを盛り込む場合もありますが、基本合意書に関して第二部で詳細解説します。
ステップ⑦:買収監査(デューディリジェンス)
基本合意書の締結が済むと、買い手側による買収詳細監査・調査(デューディリジェンス)が行われます。これは、買い手側が公認会計士や弁護士を使って、企業に内在する様々なリスク要因をビジネス、財務、法務等の観点から深くチェックすることです。買収が失敗しないように、買い手側は厳しいチェックを行います。したがって、売り手側にとってここは大きな正念場となります。自社をできるだけ正当に評価してもらいM&Aを成功させる重要な山場となります。買収監査(デューディリジェンス)に関しても第二部で詳細に解説します。
ステップ⑧:売却価格の交渉
買収監査の結果に基づき、売却価格や条件面の最終協議を行います。売却価格は基本合意書の中で、条件修正に関しての条項があるのが一般的です。買収監査では、それま で想定できなかったような問題が発見される場合もあります。その問題によっては、大幅に条件修正となる場合があります。最悪の場合、売買交渉が 白紙に戻されてしまう事態に発展することもあるのです。ここのところが交渉の大きなポイントとなるので、改めて第二部で詳細に解説致します。
ステップ⑨:最終合意
いよいよ最終合意です。ただし、最終合意でホッとするのは禁物です。不動産の売買と違って、会社は生き物であり買収後のアフターM&Aを見据えた最終合意でなければ結局は失敗M&Aとなってしまい会社に多大な損失を被るリスクが内在することに細心の注意を払うことを決して忘れてはいけません。
ステップ⑩:株式譲渡契約書等の締結
最終的な売却価格やその他M&Aの付随条件が決定すると、株式や営業権の最終的な譲渡契約書の調印となります。
ここでは、買収監査後の交渉を踏まえ、基本合意書の内容をベースに変更を加えた株式譲渡契約書(事業譲渡契約書)を締結します。弁護士の立会いのもと、あらゆる事態への対策を網羅した契約書が重要です。しかし、どんなに完璧に契約書を作成したつもりでも、思わずはまってしまう M&Aの落とし穴もあるのです。