M&Aコラム第15回・第二部M&A実務応用編を掲載しました!!。
第十五回M&Aコラム M&Aコラム応用編【M&Aの疑問にお答えします❗】
《その⑩ 売り手企業売却の注意点、落とし穴は?》
前回のM&Aコラムでは、ライザップを例にとり「負ののれん」を解説いたしました。今回は「のれん代」から、M&A企業価値について、売り手サイドの立場での注意点を解説したいと思います。「のれん代」とは企業の無形資産の一種であり、会社法適用以前の単体 決算では「営業権」として計上されていたことから、いまだに「営業権」といわれることがあります。
上場企業のM&Aでは、企業の株価には市場での取引価格という時価がありますが、この市場取引価格に何らかのプレミアムが上乗せされた株価でM&A が成立することがほとんどです(ただし、前回のM&Aコラムでも述べましたが、救済目的のM&A ではマイナスのプレミアムが乗ります )。
この時 買収された企業の市場株価から求められるM&Aの対象となる<株価 x 譲渡対象株数> 
と買収価額との差額がのれん代となります 。買い手が複数あるような上場企業の M&A 案件では買収価格が競り上がることが多く、一方非上場企業の企業価値算定はいろいろな算定方法がありますが、例えばわかりやすい一例をあげると、売り手企業の儲かる力からのれん代を計算し、 純資産額にのれん代を加算することで買収価額を決めるという方向でのれん代を考える方法論があります。
そしてのれん代は、企業収益に一定の計算期間を掛け算して求める方法があります 。のれん代の計算期間については、業種・その時の経済情勢・対象企業の特性(収益構造の強さや維持しやすいかどうか)等により、 2 年から5年の程度の間で決着がつくのが一般的です 。
のれん代のポイントは儲かる仕組みがのれん代の源泉であるということです。中小企業M&A「のれん代」の計算期間に大きく関与するのは、その企業が具体的にはどのような儲かる仕組みを持っていてそれはどのくらいの期間維持できそうかというのが重要なポイントです。儲かる仕組みを経営者が経営計画として、論理的に整理されて相手を納得させるように体系化できているのかどうかが重要です。
来年のことは 蓋を開けてみないとわからない成り行き任せ、もしくは特に根拠もなく今年並みだろうと考えるのではなく、来年以降の事業計画を客観的根拠に基づいて立てることができ収益も予想できれば、 仮に想定外のマーケ ッ ト環境の変化や競合企業の新規参入があったとしてもそれが儲かる仕組みにどう影響するかが理解できているので事前対策を計画的に立てられ、収益予想を適宜修正するといったことも可能になります 。成り行きに任せた結果オーライとしての経営姿勢と、きちんとした計画や収益予想をベースにした経営から生み出し利益では、儲かっている金額が同じだとしてものれん代を考える際の計算期間の設定はまったく違ってきます。環境の変化や競合企業の新規参入があっても、それが自社の儲かる仕組みにどう影響するかが理解できていれば事前の対策を計画的に立てられ、収益予想を適宜修正するといったことが可能になり、企業の魅力すなわち企業価値としては天と地ほどの差が生じます 。さきほども言いましたが、中小企業にとって儲かる仕組みを経営者が経営計画として、論理的に整理されて相手を納得させるように体系化できているのかどうかがM&Aでは大変重要なポイントなのです。
「儲かる仕組みを持っている」そのよさをM&A の交渉過程に反映させるためには, 売り手企業の競争力がどこにあって、 その競争力の源泉について、 第三者である買い手企業が理解できるように説明できる能力が必要です。売り手企業が確かな競争力を持っているのであれば、買い手企業からは魅力的に見えることはいうまでもありません。それを譲渡価格の引上げにつなげるために、その競争力がどこから生じているのかをきちんと買い手に理解してもらう必要があります。買い手がこの競争力の源泉を理解できなければ、M&Aをした後でも競争力を維持できるか確信が持てず、確信が持てなければ評価が低下してしまいます。買い手に正しく理解してもらうために買い手が理解できるような説明でなければなりません 。
買い手に競争力の源泉を正しく理解してもらえれば、買い手はM&A の後に自分の戦略に基づく将来計画をより具体的に立てられるようになり、対等な立場で交渉のテーブルで向かい合うことができます。
[事業計画書があるか] 中小企業のM&Aにおいて、もし売り手の企業が事業計画書を作成しているのであれば、 まずそれを分析して判断材料にすることができ、きちんとした根拠に基づいてその企業の将来性や企業価 値を評価することができます。同時に、事業計画書からは現在売り手企業が目指している方向がわかり、買い手が考えている戦略と方向性がマッチするのかどうか、あるいは大幅な方向転換をしないといけないのかどうかも判断できます 。買い手の立場から見れば、売り手が事業計画書を作成していれば客観的な評価が可能になり、リスクの分析もより正確になり 売り手の企業の評価もまた正確になります 。

不確実性が低くなれば 相対的に価格は高くなり、売り手にとっても「事業計画書」を作っておくことは、売り手価格而での有利につながります。M&Aにおいて事業計画、経営計画の重要性が少しでもご理解頂ければと思います。

今回はここまで!次回もM&Aコラム応用編【M&Aの疑問にお答えします❗】お楽しみに!