M&Aコラム第14回・第二部M&A実務応用編を掲載しました!!。
(次回、第15回のM&Aコラムは2019年7月1日掲載予定です!!また次回もお楽しみに!!)

第十四回M&Aコラム

M&Aコラム応用編【M&Aの疑問にお答えします❗】

《その⑨2018年M&A業界トピック~負の<のれん>について》
今回のM&Aコラムは昨年、2018年M&A業界トピックとして、世間でも注目された、ライザップのM&Aについて取り上げてみようと思います。ライザップのM&Aで疑問に持たれた方も多い【負ののれん】について解説してみましょう。ライザップで最も有名な事業はもちろん減量ジム事業で、今でもこれが本業と言えます。ですが世間一般では、ライザップは、M&Aによる様々な業種の買収を繰り返してきたことはあまり知られていません。今では美容・健康関連事業、アパレル事業、住関連ライフスタイル事業、エンターテイメント事業などを抱えるグループ企業にまでなりました。もともとは健康コーポレーションという社名で事業を展開してきましたが、2016年に持株会社の社名をRIZAPグループとしています。このライザップですが、買収を繰り返したと言ってもその多くは業績の悪い企業でした。業績の悪い企業は、安く買うことができ、加えてライザップは、会計においてIFRS基準を採用しています。買収先の純資産より安く買うことで、負ののれんによる一括利益計上処理の積み重ねを繰り返してきました。ここで注目を浴びたのが「負ののれんによる巨額の発生益」を上げたことで、収益力や事業リスクにおける会社の企業価値判断を見誤ったということです。もちろん、安く買収した会社を再生してきちんと収益化できれば、何も問題はないわけです。ですが、2019年3月期の決算見通しを、最終損益で70億円の赤字と発表しました。それまでは159億円の黒字見込みだったのと比べると、一気に引き下げました。『負ののれん』は一時的に利益を押し上げる要因にはなりますが、それだけでは収益事業たりえません。ライザップは株価が純資産よりも低い企業を買収し再建することで、業績を伸ばしてきました。その結果、多額の負ののれん代が利益に計上され、業績がかさ上げされていました。2018年3月期の営業利益159億のうち、負ののれん代による利益は約50億円と33%近くに上ります。ライザップのM&A戦略は、割安企業の再建に成功する前提の上で成り立っています。
ここで「負ののれん」について解説しておきましょう。対等な企業合併において持分プーリング法により合併する場合は、両社のB/Sを合算するので、諸資産も諸負債も純資産も、もともと貸借が一致していた両社の合計になりますから、どこにも差異は出ません。ところが、パーチェス法により合併(取得)した場合は、被合併会社のB/Sの諸資産・諸負債を時価評価して、合併会社に合算します。純資産は、基本的に対価として、被合併会社の株主に交付した合併会社の株式になりますが、これが、時価評価した諸資産-諸負債と一致しない場合が生じます。合併し合算した後の資産合計(借方)と、負債合計+純資産合計(貸方)が一致しなくなるということです。このギャップ(借方合計-貸方合計)のことを、暖簾(のれん)といいます。この「のれん」(暖簾)は、無形固定資産で、簡単に言うと一種の営業権・ブランドと説明されますが、ここは奥が深いのでまた改めてM&Aコラム応用編で特集を組んで解説する予定です。本来であれば、諸資産から、返済しなければならない諸負債を差し引いた、純粋な資産分(純資産)で買い取るのであれば、等価交換です。それが、もし諸資産-諸負債よりも、高値で買い取ったのであれば、その差額分は、実際の価値よりも高く評価した、つまり被合併会社のブランド力を買ったといえるわけです。そしてこの「ブランド」を和訳したのが「のれん」なわけです。時価評価された諸資産-諸負債よりも、買取価格の方が安い場合もあります。正味の価値よりも安く評価したわけです。この場合は、マイナスのブランド価値ということで、そのまま和訳して「負ののれん」といいます。「負ののれん」勘定は、発生した期に一括して特別利益として処理します。
今回のライザップのM&A戦略は、ターンアラウンド型M&A(経営再建を図るM&A)の失敗ともとれます。「負ののれん発生益」とはターンアラウンド利益の先取り。簿価純資産より株式時価総額が小さいとは、つまりPBR1倍未満ということです。PBR1倍未満になるにはそれなりの理由があるわけで、本当に割安ですぐに儲かるわけではありません。PBR1倍未満の銘柄に投資する目的は何か?いくつか理由がありますが例えば、
・株式時価総額がネットキャッシュ未満で、少なくともネットキャッシュ水準まで株価は上がると期待している。・金融危機等でマーケットが大暴落し、適正な株価が付いていないところをリスクテイクする。・将来のターンアラウンド(経営再建)を期待している、等々です。企業がビジネスとしてPBR1倍を切るような割安株に投資する理由があるとすれば、それは「将来のターンアラウンドを期待している」場合が多い。自社でターンアラウンドする(経営再建を図る)ノウハウと実力のある企業が買収しなければ失敗に終わるということです。経営状態が悪く、簿価純資産以下の価値でしかマーケットで評価されていないことはあり得ます。そんな経営不振に陥っている会社に敢えて投資して、経営を改善させてリターンを得るというM&A戦略が今回のニュースの本質の大事なポイントのひとつなのです。
今回はここまで!次回もM&Aコラム応用編【M&Aの疑問にお答えします❗】お楽しみに!